藤井貞和

FUJII SADAKAZU

詩 Poetry


「神田駅で」(『春楡の木』思潮社)

 

夢のあとさきの、

希望がつながるならよいのに。

聖なる、

おりたたまれた、

棚田のように見える下町。

駅舎の向こうにひろがる下町。

ななめのそらをえがいて、

夜明けがやってくる。

神 神さまの手が、

田 田植えしている?

夢のなかではつたう水。

穂明かりして、

しばらくすると、わたしは、

一本の稲でした。

「神田駅で」より

 

藤井貞和による、トポスでの「神田駅で」の朗読(土地への記憶化)

2021年10月28日(木) 11:38〜11:40

Longitude: 139° 46' 13.608" E Latitude: 35° 41' 30.57" N

JR神田駅 高架線下

 
 

※藤井貞和氏による作品巡回ツアー Report & Interview.はこちらから


藤井貞和 FUJII SADAKAZU

藤井貞和(ふじい・さだかず) 1942年、東京市小石川区(いま、文京区)の生まれ。奈良市に疎開して、戦災の記憶はおぶわれて逃げ、燃える古都を佐保川べりから遠望する。1953年、小学五年、東京に遊ぶ。日記に「大東京」とある。エスカレーターを見たくて白木屋(デパート)に行くも、休日。勝鬨橋が開くのを待つ、開かず。科学博物館の展示を東京の子供が毎日観られるのはうらやましいこと。上野動物園で子象のはな子に会って、撮影する。1954年から、東京、船橋、大船、再び東京。2007年、沖縄論が『甦る詩学』(まろうど社)に纏まる。「神田駅で」(読売新聞2008/5/20、詩集『春楡の木』思潮社2011、所収)は朝帰りの駅から「神」の「田んぼ」が見えたので。2016年、はな子亡くなる。2012年以後は『文法的詩学』『日本文法体系』『日本文学源流史』『〈うた〉起源考』など、物語論や詩論の仕上げを急ぐ。『春楡の木』のあとは、詩集『美しい小弓を持って』思潮社2017。