高橋睦郎

TAKAHASHI MUTSUO

詩 Poetry


97「遺跡」98「夜航」99「わが詩法」100「贈物」

(『つい昨日のこと 私のギリシア』思潮社)

 

かつて往古(そのかみ) ギリシア人が やまづたい 海づたい

点点と増やしていった ポリス コロニア

その烽(とぶひ)の果てが 現代極東のこの都会にも

ただし十人でいっぱいの極小のコロニア

新宿 渋谷 新橋 上野 浅草 飛び飛びの店々

若い私は夜ごと漂流 止り木に纜(ともづな)を結んでは

沢山の目と 唇と 腿と 出会っては 別れた

ギリシア風の愛のくさぐさを 学んでは 忘れた

「遺跡」より

 

高橋睦郎による、トポスでの『つい昨日のこと 私のギリシア』の朗読(土地への記憶化)

2021年10月30日(土) 18:37〜18:42

Longitude:139° 42' 34.488" E Latitude:35° 41' 24.462" N

新宿2丁目の公園(新宿公園) 遊具前

 
 

 
 

高橋睦郎 TAKAHASHI MUTSUO

1937年、北九州八幡市生まれ。福岡教育大学教育学部国語国文科卒。1962年に上京し、現代詩、俳句、短歌、新作能、オペラなど多彩な分野で創作活動を続ける。1982年『王国の構造』で藤村記念歴程賞、1987年『王女メディア』で山本健吉選山本健吉賞、1988年『稽古飲食』で読売文学賞、同年『兎の庭』で高見順賞、1993年『旅の絵』で現代詩花椿賞、1996年『姉の島』で詩歌文学館賞、2007年織部賞、2010年『永遠まで』で現代詩人賞を受賞。2000年紫綬褒章。2012年旭日小綬章。2017年文化功労者・日本芸術院会員選出。