管啓次郎

SUGA KEIJIRO

詩 Poetry


「十二月が十二月を思い出している」

 

光が降る、小さな光の群れが

その群れを毛皮に宿して

はぐれた犬の仔が懸命に走っている

彼はabécédaire を学ぶだろう

どんなミモザ色の予感が過去における

未来をさしていたのか

未知の活用を探していたのか

そのころ初めて読んだ詩は「地帯」で

それですべての朝の街路が詩の洪水になった

リュテシアのアテナイの地理学者が

赤いセーターを着て口笛を吹いていた

坂の石段に性別があることを彼に教わった

「十二月が十二月を思い出している」より

 

管啓次郎による、トポスでの「十二月が十二月を思い出している」の朗読(土地への記憶化)

2021年11月13日(土) 16:03〜16:05

Longitude: 139° 45' 44.928" E Latitude: 35° 41' 55.47" N

駿河台 アテネフランセ近くの女坂

 
 

 
 

管啓次郎 SUGA KEIJIRO

1958年生まれ。明治大学理工学部教授(批評理論)。『コロンブスの犬』(1989年)以後、旅と土地をめぐるエッセーを数多く発表。『斜線の旅』にて読売文学賞受賞(2011年)。『Agend’Ars』(2010年)から『PARADISE TEMPLE』(2021年)まで、8冊の日本語詩集と1冊の英語詩集がある。これまでに15か国以上の詩祭・大学で招待朗読。2021年、管啓次郎の仕事をめぐる英文の研究論集としてWild Lines and Poetic Travels (Doug Slaymaker, ed.) が出版された。